【捻挫はするな。絶対にだ】Jリーグトレーナーが解説

スポーツ医科学

1回ひねるだけで、あなたのパフォーマンス曲線は“一生ねじれる”とはよく言ってものです。

サッカー選手でも、陸上選手でも、バスケでも同じ。

多くの選手が軽く考えがちなケガ、
それが足関節捻挫

でも、今日だけはハッキリ言わせてください。

捻挫はするな。絶対にだ。
その理由は「痛いから」ではなく、
“一生パフォーマンスの足を引っ張るから”です。

今回紹介する論文のテーマは膝(PFP)ですが、
読み解くほどに見えてくるのは、

“1つの関節の乱れは、全身の走りをゆがめる”
“小さなケガは、パフォーマンスを長期的に削る”

という、スポーツ現場で痛いほど実感する真実。

そしてこれは、足関節捻挫にも100%当てはまる内容です。

ではなぜ“パフォーマンス的に”捻挫がダメなのか。

普段Jリーグクラブでサッカー選手たちを指導している私が、論文のエビデンスをベースにわかりやすくお伝えします。


1. 捻挫の本当の恐ろしさは「痛み」ではない

それは “フォームを永久にゆがめる” こと

今回の研究では、スプリンター56人の動きを3D解析し、

  • 関節角度
  • 地面反力
  • パテラ(膝)の追従
  • アライメント(向き)
  • 筋力・柔軟性との関係

を詳細に分析しました。

その結論は明確で、

“1度動きが崩れた選手は、その後のパフォーマンスが落ちる”

たとえば、

  • 膝の角度が少しズレる
  • 股関節の安定性が低い
  • ハムストリングスが硬い
  • ITバンド(もも外)が張る

これらはすべて
「走りの効率を下げる」→「スピードが落ちる」という流れに直結していました。

そして捻挫はまさに、
これらの“フォームの崩れ”を一気に呼び込むスイッチになります。

✔ 捻挫後によく起こる現象

  • 接地の瞬間に足が外側へ逃げる
  • 片脚着地で膝が内側へ入る(ニーイン)
  • 推進力より「耐える動き」が増える
  • 右左で接地時間が変わる
  • ストライドと回転数のバランスが崩れる

結果として現れるのは、
「スピードが出ない身体」

痛みが消えても、フォームの狂いは残ります。
これが何よりも怖い。


2. 捻挫すると“スプリント効率”が落ちるメカニズム

論文の結果を足関節に置き換えると、こうなります。

① 地面反力(GRF)が落ちる

論文では、GRF(地面反力)が高い選手ほど効率よく走れていました。

しかし捻挫後の選手の多くは、

  • 地面を「押す」力ではなく
  • 衝撃を「逃がす」動き

が無意識に増えます。

つまり、

地面に“刺さらない”走りになる → 加速が弱くなる

これは長期的に見ると、かなり致命的。


② アライメントの乱れ → 連鎖的に下肢全体がズレる

研究ではアライメント(関節の向き)が乱れた選手ほど、
パフォーマンスがガタ落ちしていました。

捻挫後は、

  • つま先の向きが安定しない
  • 着地の軌道がバラつく
  • 膝や股関節が代償して動く

こうした**“代償運動コンボ”**が発生しやすい。

そして代償は、
加速・減速・方向転換すべてを弱くします。


③ ハムの硬さ・ITバンドの張りが悪化する

※ここで言う【ハム】とは、もも裏のこと。
【ITバンド】とは、もも外のことを指しています。


研究でも示されていますが、

  • ハムが硬いほどパフォーマンスが落ちる
  • ITバンドが張るほど動きが悪くなる

これはまさに“捻挫後あるある”。

すると足はこう変わります。

  • “蹴る”動きが弱くなる
  • ストライドが伸びない
  • 膝が内に入りやすくなる
  • ブレーキ動作が増える

つまり、

捻挫=「走り方の質が下がる病気」
という認識が正しい。


3. 1回の捻挫が「1年分の成長」を奪う

ここが今回いちばん伝えたい部分です。

■ 捻挫後の選手に起こる変化

  • 無意識のフォームのズレ
  • 本来必要のない筋緊張
  • 片脚着地の不安感
  • 可動域の微妙な低下
  • 着地タイミングのズレ

これらが積み重なると…

練習量を積んでも、スピードが戻らない

という状態になります。

現場ではこれを
「動きが汚れる」
と言います。

1回の捻挫で、
本来伸びるはずだった“成長曲線”が毎回少しずつ下にずれる。

選手本人は気づきません。
でも走りのデータを取るとハッキリ出ます。


4. 捻挫をしない選手は、結局“伸びが早い”

論文でも、

  • 筋力バランス
  • アライメント
  • 柔軟性
  • 動きの安定性

を整えた選手は、

パフォーマンスも向上し、ケガも減った

と報告されています。

サッカーでも陸上でも同じです。

捻挫をしない選手は

  • 加速が速い
  • 方向転換が速い
  • 接地が安定している
  • 長時間でも動きの質が落ちにくい
  • 練習が積める
  • 結果、伸びが早い

つまり捻挫しないということは、
「育成のスピードが落ちない」という最大のメリットなんです。


5. まとめ:捻挫=パフォーマンスの“借金”

捻挫は痛みではなく、

パフォーマンスという“貯金”を奪われ、
動きの質という“借金”を背負わされるケガ

です。

だからこそ、
選手に伝えたいのはたった一つ。

捻挫はするな。絶対にだ。
それは「痛いから」ではなく、「遅くなるから」

そして保護者・指導者に伝えたいのは、

捻挫しない選手は、結局いちばん伸びる。

という事実です。

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