
第1章:キャプテンに必要な要素とは?
「キャプテンって何をする人ですか?」
ジュニア世代の選手から、こんな質問を受けることがあります。
“声を出してまとめる人”というイメージが強いかもしれませんが、実際はそれだけではありません。
現代サッカーにおいてキャプテンに求められる役割は、**「リーダーシップの多様性」**にあります。
🧭 キャプテンに求められる5つの力
要素 | 内容 |
---|---|
① プレーレベルの安定感 | 試合で安定したパフォーマンスを出せる力 |
② 精神的支柱としての落ち着き | 苦しい展開でもパニックにならない |
③ 周囲を動かす声かけ力 | 状況判断と声の使い方(指示・励まし・切替) |
④ 行動で示すリーダーシップ | 言葉より“背中”で語れる姿勢 |
⑤ 自己管理力 | 食事、睡眠、体調管理…常に整えたコンディション |
これらは、いわば“フィールドの中の指揮官”として必要な素養です。
たとえば、長谷部誠選手のように冷静沈着にチームのバランスを保つキャプテンもいれば、
長友佑都選手のようにエネルギーでチームを盛り上げるタイプもいます。
そして今の代表主将・遠藤航選手は、黙々とプレーで信頼を勝ち取る“無言のリーダー”。
🧬 近年注目される「フィジカル」とキャプテンの関係
実は、フィジカルの強さや走力もリーダーシップと大きく関係しています。
- チームが苦しい時間帯、「誰が一番走っているか?」
- ピンチの場面、「誰が1対1で相手を止めるか?」
こうした場面で“頼られる存在”であるには、技術や戦術理解だけでなく、
**「走れる体」「当たり負けしない体」「倒れない心身」**が必要なのです。
✔ 体力=声を出す余裕
✔ デュエル力=仲間の信頼
✔ 自己管理=毎日を戦う姿勢
だからこそ、最近の日本代表では**「フィジカルの強いキャプテン」**が選ばれる傾向にあります。
🧒 ジュニア世代でも伝えたいこと
キャプテンは、技術が一番高い選手じゃなくていい。
でも「誰よりもふざけない」「誰よりも本気」な選手が選ばれやすい。
そのうえで、
- ご飯をしっかり食べる
- 夜ふかししない
- トレーニングを全力でやる
…そんな基本ができている子こそ、「任せたくなる存在」なのです。
✍️ ワンポイントメモ
キャプテンシーとは、才能じゃない。
「毎日の姿勢」から育つ“人間力”のひとつです。
第2章:歴代キャプテンの一覧とプロフィール
「日本代表のキャプテン」と聞いて、あなたは誰を思い浮かべますか?
長谷部誠の冷静さ、中田英寿のカリスマ性、長友佑都の情熱…。
時代ごとに、リーダー像は少しずつ進化してきました。
この章では、サッカー日本代表の歴代キャプテンをプロフィール・フィジカル・キャプテンタイプ別に比較しながら紹介します。
🔢 歴代キャプテン一覧(代表的選手)
選手名 | 在任期間 | ポジション | 身長 / 体重 | 主な大会 | リーダー像 |
---|---|---|---|---|---|
八重樫茂生 | 1968 | MF/FW | 178cm/68kg | メキシコ五輪1968銅メダル | 日本代表初代キャプテン、歴史的重み |
小城得達 | 1969–1974 | 多ポジション | 178cm/64kg | ‑ | 範囲広い司令塔的存在 |
釜本邦茂 | 1975–1977 | FW | 181cm/79kg | メキシコ五輪得点王 | 攻撃リーダー、得点力で牽引 |
柱谷哲二 | 1991–1995 | CB | 182cm/70kg | ‑ | 熱血背番号6、采配力あり |
井原正巳 | 1996–1999 | CB | 182 cm/74kg | W杯1998初出場 | アジアの壁、守備的司令塔 |
宮本恒靖 | 2004–2006 | CB | 176cm/72kg | W杯2006 | 冷静沈着、戦術理解深い |
川口能活 | 2006–2008 | GK | 180 cm/77kg | W杯2006,2007アジア杯 | ゴール守りつつチーム鼓舞 |
中澤佑二 | 2008–2010 | CB | 187cm/78 kg | W杯2010 | 熱血型・“空中戦の支柱” |
長谷部誠 | 2010–2018 | MF | 177cm/72 kg | W杯3大会、アジア杯 | バランサー型・静かなる統率力 |
吉田麻也 | 2018–2022 | CB | 189cm/78kg | W杯2022 | 経験型リーダー、精神的支柱 |
遠藤航 | 2023–現在 | DMF | 178cm/77 kg | アジア杯2023, W杯予選 | 体現型・黙して語る実力派 |
📌 タイプ分類(キャプテンのスタイル)
タイプ | 説明 | 該当選手(例) |
---|---|---|
■ カリスマ型 | 圧倒的な個性と存在感で引っ張る | 中田英寿 |
■ バランサー型 | 全体の温度感を調整し、冷静に采配 | 長谷部誠、宮本恒靖 |
■ 熱血型 | 声や鼓舞でチームをまとめる | 中澤佑二、 |
■ 体現型 | 言葉よりもプレーで魅せる | 遠藤航 |
💡 注目ポイント:フィジカルの進化
時代 | 平均身長・体重(代表主将) | 傾向 |
---|---|---|
2000年代前半 | 約176cm/72kg | 頭脳・戦術重視型が主流 |
2010年代 | 約178cm/73kg | バランス+フィジカル |
2020年代 | 約178cm/75kg前後 | デュエル・走行力・自己管理型が中心 |
👉 時代が進むごとに「動ける・戦える・倒れない」キャプテンが増加傾向に。

第3章:遠藤航はなぜキャプテンに選ばれたのか

「遠藤航がキャプテンって、静かすぎない?」
そんな声を、W杯後によく耳にしました。
確かに彼は、ピッチで大声を張り上げるタイプではありません。
でも今、彼はまぎれもなく“チームの中心”です。
その理由は、声ではなく「行動」と「数字」で語る」リーダーだから。
① 数字で語る信頼:デュエル王の実績
- 2021-2022シーズン(ブンデスリーガ):デュエル勝利数1位
- プレミア移籍後(リヴァプール):対人守備力・リカバリー能力が評価され、レギュラー定着
デュエルとは「1対1の勝負」。
つまり、彼は「毎試合、誰よりも相手と戦い、負けなかった選手」だったのです。
🧠 チームは、苦しい時に“頼れる背中”を本能で見ています。
遠藤の姿勢そのものが、無言のリーダーシップなのです。
② フィジカルの説得力:体で語るリーダー
データ | 数値 |
---|---|
身長 | 178cm |
体重 | 約77kg(ベスト体重と本人談) |
ポジション | ボランチ/CB兼任 |
強み | 走力・スタミナ・当たり負けしない体幹 |
驚くべきことに、彼は「体重が1kg変わるだけで、プレー感覚が変わる」と語っています。
つまりそれだけ、自分の体を“数値で管理”できている選手なのです。
「体は関係ないと言われるが、関係あると思う」
——遠藤航(ABEMAインタビューより)
この発言にすべてが詰まっています。
「日本人だから通用しない」ではなく、「通用する体を作る」覚悟こそ、彼がキャプテンに選ばれた理由のひとつです。
③ 誰よりも“整っている”男
遠藤は、「キャプテンだから」意識しているわけではありません。
彼は昔から“自分の管理”を徹底している選手です。
- 食事管理(試合前後の栄養補給のタイミング)
- 睡眠管理(起床・就寝ルーティン)
- トレーニングの質の管理(量より質)
若手の選手が彼に対して「見て学べることが多い」と語るのは、声かけではなく、“日々の姿勢”が自然にリーダーとして滲み出ているからなのです。
④ ポジションがリーダーを育てる
彼がプレーするのは、守備的MF(ボランチ)。
まさに「全体のバランスを見ながら、守備も攻撃もつなぐ」指揮官的ポジションです。
- パス本数・タッチ数・カバー距離すべてが多い
- 誰よりも“全員を見ている”から、自然と指示やカバーができる
ポジションそのものが、「全体を見て整える仕事」。
その役割が、彼のキャプテンシーをさらに際立たせています。
✅ 小まとめ
遠藤航がキャプテンに選ばれた理由は、
声ではなく「体で、姿勢で、そして数字でチームを支えている」から。
ピッチに立てば、背中が語る。
声は小さくても、存在感はチーム最大。
それが、現代の“体現型キャプテン”の姿です。
第4章:現代サッカーとキャプテンシーの変化
昭和、平成、そして令和へ──
サッカー日本代表のキャプテン像は、時代とともに確実に「進化」しています。
一昔前は、「声を出してまとめる選手」「熱血漢」がキャプテンの条件でした。
しかし現代のトップチームでは、そのスタイルだけでは物足りないのです。
① 声出しだけでは足りない?現代型キャプテンの条件
現代のサッカーは、スピード・判断・戦術の複雑化が進んでいます。
そのなかで求められるキャプテン像は、次のように変化しています。
時代 | 主なキャプテン像 | 求められる力 |
---|---|---|
昭和〜平成初期 | 声・根性・闘志 | 鼓舞・統率 |
平成中期 | バランス型・頭脳型 | 戦術理解・冷静さ |
現代(令和) | 体現型・合理型 | フィジカル+自己管理+プレーで牽引 |
✔ まとめ役 → ✔ 見本を見せる人へ
✔ 気持ちの強さ → ✔ 整った習慣と判断力へ
キャプテンシーは、もはや「情熱」だけでは測れない時代になったのです。
② 海外キャプテンとの比較から見えること
欧州の名門クラブでキャプテンを務める選手たちは、戦術理解・フィジカル・冷静さの3拍子を備えています。
選手名 | 所属 | 特徴 |
---|---|---|
ファン・ダイク | オランダ代表/リヴァプール | 圧倒的空中戦、指示の的確さ、常に冷静 |
マルキーニョス | PSG(ブラジル) | 守備陣を統率し、状況判断に優れる |
マルティネス | アルゼンチン代表GK | 最終ラインからの鼓舞、メンタル支柱 |
ヘンダーソン(前キャプテン) | リヴァプール | 声とプレーで状況を読むバランサー型 |
→ 彼らはみな、「感情」より「合理性と管理力」を持っている。
遠藤航がリヴァプールで評価されたのも、「判断と管理ができるMF」だったからこそです。
③ ポジション別キャプテン傾向
ポジション | キャプテンの特徴 | 該当選手(日本代表) |
---|---|---|
GK | 声かけ・全体俯瞰・メンタル支柱 | 川口能活、楢﨑正剛 |
CB | 守備統率・落ち着き・空中戦 | 宮本恒靖、中澤佑二、吉田麻也 |
MF(DMF) | バランス感覚・判断力・体現 | 長谷部誠、遠藤航 |
FW | 鼓舞・勢い・得点力 | 釜本邦茂、中田英寿(異色型) |
特に近年は「ボランチ型キャプテン」が世界的トレンド。
→ 試合の“心臓”であり、全体を見て調整できるため。
④ キャプテン=“人間力”で選ばれる時代へ
最近のトレンドは「メディア対応」「SNS時代でのふるまい」「後輩指導」なども含めた
**“人間力の総合値”**でキャプテンが評価される傾向があります。
- 遠藤航:謙虚かつ芯のある受け答え、的確なコメント力
- 吉田麻也:外国語対応+組織内コミュニケーション力
- 長谷部誠:本の出版や模範的ふるまいで尊敬を集めた
サッカーだけが上手いだけでは、今の日本代表ではキャプテンにはなれない。
「人格・発信力・模範」も、重要な評価項目なのです。

✅ 小まとめ
声を出すだけがキャプテンじゃない。
現代のキャプテンは「見えないところでチームを整える人」。
フィジカルの管理、試合中の判断、メンタルコントロール…。
それを“自然にできる人”が、信頼され、キャプテンになる。
第5章:ジュニア世代でキャプテンを任されたら?
少年サッカーでキャプテンを任される。
それは、ただの「腕章」ではなく、“子どもの人間力を伸ばすチャンス”です。

① 技術が一番うまくなくてもいい
まず伝えたいのは、キャプテン=エースではないということ。
実際、現場ではこんな選手が任されることが多いです。
- 毎回ちゃんと挨拶できる
- 練習を手を抜かない
- コーチの話を聞く姿勢がある
- 仲間に声をかけられる
- ミスしても切り替えが早い
つまり、**「当たり前のことを当たり前にできる子」**なんです。
これは将来、社会に出ても通用する力。
キャプテン経験は、単なる役職ではなく**人格の土台を育てる“機会”**になります。
② 子どもなりの「キャプテンシー」を認める
大人がやりがちなのは、こうした“押しつけ型キャプテン像”です。
- 「もっと声を出せ!」
- 「みんなをまとめなさい!」
- 「もっと強い気持ちを見せなさい!」
でも、子どもにはそれぞれのリーダーの形があります。
- 無口でも行動で示せる子
- ムードを良くする“聞き役”タイプ
- チームの空気を察して動ける子
「おとなしいけど、ちゃんと見ている」
そんなキャプテンも、立派な“リーダー候補”です。
③ 親や指導者にできる3つのサポート
サポート項目 | 内容 |
---|---|
1. “責任”より“信頼”を伝える | 「任されたからには…」ではなく、「君だから任された」と伝える |
2. 失敗を責めず、プロセスを見守る | 指示が通らなかった日も、“挑戦したこと”を評価する |
3. プレッシャーの解き方を教える | 「全部やらなくていい」「1つだけ意識しよう」など、分散の考え方を |
大人がキャプテン像を“型にはめる”のではなく、
「その子らしいキャプテンシー」を育てていくことが重要です。
④ 遠藤航も「小学生のときから真面目だった」
遠藤航選手は、小学生時代から
- 真面目で手を抜かない
- 怒られず、でも目立ちすぎない
- 試合では責任を背負えるタイプ
だったと、育成年代の指導者が証言しています。
つまり、「キャプテンになる子」は、日常の中に“芽”があるんです。
特別な才能じゃなく、習慣と姿勢で育つ資質なんです。
✅ キャプテンチェックリスト(保護者・指導者向け)
「この子はキャプテン向き?」と思ったときの簡易チェック項目です👇
✅ ミスをしてもふてくされずに戻れる
✅ 仲間に声をかけるのが自然にできる
✅ 練習や試合中、誰かが困っていたら助けに行く
✅ 指導者の目を見て話を聞いている
✅ 誰かが頑張ったら“よくやった”と言える
1つでも当てはまったら、もう“キャプテンの芽”はあります。
🧠 小まとめ
キャプテンに選ばれることは、ゴールじゃない。
「人として伸びるための、ひとつのきっかけ」。子どものキャプテンシーは、信じて任せることで育ちます。
「リーダーって大変だけど、楽しい」。そう思える経験が、人生の宝になります。
【まとめ】
「キャプテン」とは、単なる腕章ではなく、チームの“心臓”ともいえる存在。
サッカー日本代表の歴代キャプテンたちは、時代ごとにその役割やスタイルを変えながら、日本のサッカーを支えてきました。
- 長谷部誠のような“バランサー型”
- 宮本恒靖のような“戦術リーダー型”
- 中澤佑二のような“鼓舞型”
- そして遠藤航のように“プレーで語る体現型”
現代のキャプテンに求められるのは、声よりも、姿勢・フィジカル・自己管理能力。
それは、ジュニア世代の子どもたちにも通じる要素です。
子どもにとって、キャプテン経験は「リーダーになるため」ではなく、
「人として信頼される存在に近づくための第一歩」。
サッカーは、仲間と戦うスポーツ。
だからこそ、キャプテンという存在が、これからの育成にも大きな意味を持ちます。

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