第1章|速筋型の子に合いやすいトレーニングの考え方
「スピードが武器になる子」をどう伸ばすか
速筋型の傾向がある子は、
チームの中でも比較的 動きが速く、瞬間的なプレーが目立つ ことが多いタイプです。
ただしこのタイプは、
✔ 正しく伸ばせば大きな武器になる
✔ 伸ばし方を間違えると伸び悩みやすい
という、良くも悪くも差が出やすい特徴 を持っています。
まずは、速筋型の特徴を整理しましょう。
速筋型の子に見られやすい身体・プレーの特徴
速筋型の傾向がある子には、次のような様子が見られることがあります。
- 短い距離のダッシュが速い
- 切り返しや方向転換が鋭い
- 競り合いで一瞬の強さを発揮する
- ジャンプや踏み込みが力強い
- ただし、長時間走り続けるのは苦手そう
サッカーで言えば、
- ボールを奪う一歩目が速い
- 裏への抜け出しが鋭い
- ゴール前で一瞬フリーになる
といった場面で良さが出やすいタイプです。
一方で、
- 走り込みになると急にペースが落ちる
- 試合後半で疲れが見えやすい
といった姿も見られるため、
「スタミナがない」「サボっている?」
と誤解されやすい点には注意が必要です。
なぜ速筋型の子は「疲れやすく見える」のか
ここは、保護者が知っておくと 見方が変わる重要ポイント です。
速筋は、
- 一瞬で大きな力を出せる
- その代わりエネルギー消費が激しい
という性質を持っています。
そのため、
- 全力ダッシュ
- 強い踏み込み
- 高強度の切り返し
を繰り返すほど、
見た目以上に体は疲れています。
これは根性や気持ちの問題ではなく、
筋肉のエネルギーの使い方の違い です。
【図解①】速筋型の動きのイメージ



※一瞬の動きが鋭い=速筋が活躍している場面
速筋型の子に合いやすいトレーニングの考え方
速筋型の子を伸ばすうえで大切なのは、
「量より質」 という考え方です。
合いやすい刺激の例
- 10〜30mの短距離ダッシュ
- ストップ&ゴーの切り返し練習
- ジャンプ → ダッシュなどの連動動作
- 短時間・高集中のトレーニング
ポイントは、
- 本数をやみくもに増やさない
- 1本1本を全力で行える環境を作る
ことです。
速筋型の子は、
- ダラダラ長くやる
- 疲れ切った状態で続ける
と、本来の良さが出なくなります。
「もっと走らせた方がいい」は本当か?
保護者からよく出る疑問です。
結論から言うと、
👉 必要なのは「長時間の走り込み」より
👉 「速さを保ったまま動く経験」
です。
もちろん、持久力は大切ですが、
- いきなり長距離走
- 毎回ヘトヘトになるまでの練習
は、速筋型の子にとって
逆に動きのキレを失わせる こともあります。
【図解②】速筋型に合う・合いにくい練習


速筋型の子で特に気をつけたい「やりすぎ問題」
速筋型の子は、
- 目立つ
- 活躍しやすい
ため、練習量が増えがちです。
しかし、次のサインが出ていたら注意が必要です。
- 動きのキレが落ちてきた
- 以前よりスピードが出ない
- すぐに疲れた表情になる
- ケガが増えてきた
これは、
👉 頑張りすぎのサイン
である可能性があります。
「できる子だから、もっと」ではなく、
「できる子だからこそ、休ませる」
という視点がとても大切です。
家庭でできるサポートのヒント(速筋型)
家庭でできることは、実は多くありません。
でも、やってはいけないこと を知るだけで十分です。
避けたい関わり方
- 疲れているのに「もっとやれ」
- 他の子とスピードを比較する
- 毎回結果だけを見る
意識したい関わり方
- 「一瞬の動き、良かったね」と評価する
- 疲れている日は休むことを肯定する
- キレが戻った変化を一緒に喜ぶ
速筋型の子は、
評価されるポイントがズレると自信を失いやすい
という特徴もあります。
第1章のまとめ(速筋型)
- 速筋型はスピード・瞬発力が武器
- 疲れやすく見えるのは体質的な特徴
- トレーニングは「短く・濃く」が基本
- やりすぎは逆効果になりやすい
- 保護者の理解が、能力を守る
第2章|遅筋型の子に合いやすいトレーニングの考え方
「走り続けられる力」をどう伸ばすか
遅筋型の傾向がある子は、
チームの中では 派手さは少ないけれど、安定して力を発揮できる タイプです。
ただしこのタイプは、
✔ 良さが数字や一瞬のプレーに表れにくい
✔ 評価されにくく、自信を失いやすい
という特徴もあります。
まずは、遅筋型の特徴を正しく理解しましょう。
遅筋型の子に見られやすい身体・プレーの特徴
遅筋型の傾向がある子には、次のような様子が見られることがあります。
- 長時間動いても運動量が落ちにくい
- 同じ動きを何度も安定して繰り返せる
- 試合後半でも集中力が続きやすい
- 大きなミスが少ない
- 反対に、瞬発的な動きは目立ちにくい
サッカーで言えば、
- 守備で戻り続けられる
- 中盤でパスをつなぎ続けられる
- 試合終盤でもポジションを保てる
といった 「チームを支える役割」 で力を発揮しやすいタイプです。
一方で、
- ダッシュで置いていかれる
- ジャンプ力で負ける
といった場面が目立つと、
「遅い」「運動神経が悪い」
と誤解されやすい点には注意が必要です。
なぜ遅筋型の子は「地味」に見えやすいのか
遅筋は、
- 大きな力を一気に出すより
- 同じ出力を長く保つ
ことを得意としています。
そのため、
- スプリント
- ジャンプ
- 競り合い
といった 目立つ場面 では、
速筋型の子に比べて見劣りすることがあります。
しかし、
- 動き続ける
- ミスを減らす
- 判断を安定させる
といった能力は、
試合全体で見ると非常に価値が高い ものです。
【図解①】遅筋型の強みが発揮される場面


※「目立たない=弱い」ではないことを視覚で補強
遅筋型の子に合いやすいトレーニングの考え方
遅筋型の子を伸ばすうえで大切なのは、
「積み重ねを武器にする」 という考え方です。
合いやすい刺激の例
- 技術練習の反復(パス・トラップ・ドリブル)
- ゲーム形式での持続的な運動
- 中強度で長めのトレーニング
- 判断を伴う動きの繰り返し
遅筋型の子は、
- 同じ練習を
- 集中を切らさず
続けることで、
プレーの安定感がどんどん増していきます。
「もっとスピードをつけた方がいい」は正しい?
ここで、よくある誤解があります。
👉 「遅筋型=スピード練習はいらない」
これは 間違い です。
遅筋型の子にとって、
- スプリント
- ジャンプ
- 切り返し
といった刺激は、
- 神経系の発達
- 動きの幅を広げる
ために 非常に重要 です。
ただし、やり方には工夫が必要です。
【図解②】遅筋型に必要なスピード刺激の考え方



遅筋型の子にスピード練習を入れるときのポイント
遅筋型の子にスピード刺激を入れる場合は、
- 距離は短く
- 本数は少なめ
- フォーム重視
が基本です。
「たくさんやらせて速くする」より、
「良い動きを覚えさせる」
という視点が重要になります。
遅筋型の子で特に注意したい「過小評価」
遅筋型の子は、
- 地味
- 目立たない
という理由で、
評価されにくい 傾向があります。
しかし、
- 試合に出続けられる
- 90分動ける
- ミスが少ない
という能力は、
年齢が上がるほど 強みとして評価されやすくなります。
ジュニア期に評価されなくても、
高校年代・それ以降で一気に伸びるケースは珍しくありません。
家庭でできるサポートのヒント(遅筋型)
遅筋型の子にとって、
家庭での声かけは特に重要です。
避けたい関わり方
- 「遅いね」とスピードだけを見る
- 派手なプレーだけを評価する
- 他の子と瞬発力を比べる
意識したい関わり方
- 「最後まで走れてたね」と評価する
- 安定したプレーを言葉にする
- 試合後半の良さを一緒に振り返る
遅筋型の子は、
努力が静かに積み上がるタイプ です。
それに気づいてあげられるかどうかが、
自信と継続を大きく左右します。
第2章のまとめ(遅筋型)
- 遅筋型は持久力・安定感が武器
- 地味に見えても、試合では価値が高い
- 積み重ね型の練習と相性が良い
- スピード刺激も「質重視」で必要
- 正しい評価が、将来の伸びを守る
第3章|ジュニア年代では「分けすぎない」が正解
速筋型・遅筋型は“ラベル”ではなく“ヒント”
ここまでで、
- 速筋型の伸ばし方
- 遅筋型の伸ばし方
を見てきました。
すると、多くの保護者が次に考えます。
「じゃあ、うちの子は速筋型だから、こっちを重点的に」
「遅筋型っぽいから、スピード練習は控えめで…」
この発想、半分は正しく、半分は危険です。
なぜジュニア年代で「分けすぎ」がよくないのか
結論から言うと、
子どもの体は、まだ“完成途中”だからです。
ジュニア年代(特に小学生〜中学生前半)は、
- 神経系(動きのコントロール)
- 骨の成長
- 筋肉の発達
が、バラバラのタイミングで進みます。
そのため、
- 今は速筋っぽい
- 今は遅筋っぽい
という特徴は、
数年後には簡単に入れ替わる ことも珍しくありません。
「今の特徴=将来の適性」ではない
ここは、強調したいポイントです。
ジュニア期に、
- 足が速かった子が、そのまま伸び続ける
- 体力があった子が、ずっと有利
とは限りません。
実際の現場では、
- 小学生では目立たなかった子が
→ 中学・高校で一気に伸びる - 早熟で活躍していた子が
→ 成長が止まる
というケースは、いくらでもあります。
だからこそ、
👉 早い段階で「型」を決めつけない
ことが、とても大切です。
【図解①】成長によって変わる“得意・不得意”


※「今の評価」と「将来の能力」は別物、という視覚補強
小学生年代で最優先すべきこと
小学生年代で一番大切なのは、
速筋か遅筋かを見極めることではありません。
最優先なのは、
- 走る
- 跳ぶ
- 止まる
- 切り返す
- バランスを取る
といった 多様な動きの経験 です。
この時期に、
- スプリントだけ
- 持久走だけ
と偏らせてしまうと、
動きの引き出しが少ないまま成長してしまう
リスクがあります。
中学生年代で意識したい「少しだけ特性」
中学生になると、
- 体格差
- 成長スピードの差
が一気に広がります。
この段階では、
- 得意な動きが何か
- 苦手だけど必要な動きは何か
を “少しだけ”意識する のがポイントです。
ただし、ここでも重要なのは、
👉 「特性を理由に、やらない動きを作らない」
という考え方です。
【図解②】年代別トレーニングの考え方(全体像)



早期特化がもたらすリスク
「得意なことを伸ばす」こと自体は、悪くありません。
問題は、それしかやらなくなることです。
早期に特化しすぎると、
- ケガのリスクが高まる
- 苦手動作が固定化する
- 成長後に伸び悩む
といった問題が起こりやすくなります。
特に、
- スピード系だけ
- 持久系だけ
に偏ると、
将来必要になる能力が足りなくなることがあります。
「分けない」のではなく「広げる」
誤解しないでほしいのは、
特性を無視しろ という話ではありません。
正しくは、
- 得意な動きは、少し意識して伸ばす
- 苦手な動きも、避けずに経験させる
という “幅を広げる考え方” です。
これができると、
- 速筋型の子が、試合終盤まで動ける
- 遅筋型の子が、一瞬で勝負できる
ようになり、
選手としての完成度が一段上がります。
家庭でできる大切な役割(第3章の核心)
分けすぎないために、
家庭で一番大切なのは 焦らないこと です。
- 今、目立たなくても
- 今、結果が出なくても
「体は、ちゃんと準備している途中」
だと理解してあげる。
この視点があるだけで、
- 声かけ
- 比較の仕方
- 期待のかけ方
が大きく変わります。
第3章のまとめ
- ジュニア年代は体が未完成
- 今の速筋・遅筋傾向は固定ではない
- 小学生は「多様な動き」が最優先
- 中学生は「少しだけ特性を意識」
- 分けるより、広げることが将来を守る
第4章|家庭でできるサポートと声かけ
速筋・遅筋の知識を「子どもの力」に変えるために
ここまでで、
- 速筋型・遅筋型それぞれの特徴
- トレーニングの考え方
- ジュニア年代で分けすぎない重要性
を整理してきました。
では最後に、
保護者がいちばん影響を与えられる部分についてお話しします。
それが、
👉 家庭での関わり方と声かけ です。
トレーニングよりも影響が大きいもの
意外に思われるかもしれませんが、
ジュニア年代では、
- トレーニング内容
よりも - 「どう見られているか」
- 「どう声をかけられているか」
のほうが、
継続・自信・挑戦意欲 に大きく影響します。
特に、速筋・遅筋のような
「目に見えにくい個性」が関わるテーマでは、
家庭の理解がそのまま成長環境になります。
よくある「悪気のない声かけ」
まず、どの家庭でも起こりがちな例から。
- 「もっと走れたんじゃない?」
- 「スピードが足りないね」
- 「今日はあまり目立たなかったね」
これらは決して悪意のある言葉ではありません。
でも、速筋型・遅筋型の視点で見ると、
子どもにズレた評価を伝えてしまう ことがあります。
【図解①】声かけで変わる“成長環境”


※同じプレーでも、受け取り方が変わることを視覚で補強
速筋型の子に響きやすい声かけ
速筋型の子は、
- 一瞬のプレー
- 勝負どころの動き
で評価されると、
自信を持ちやすい傾向があります。
伝えたいポイント
- 「最初の一歩、すごく速かったね」
- 「切り返し、キレてたね」
- 「あの一瞬で勝負できたのは強みだよ」
結果(ゴール・勝敗)よりも、
“動きの質”を言葉にする ことが重要です。
遅筋型の子に響きやすい声かけ
遅筋型の子は、
- 継続
- 安定
- 見えにくい努力
が評価されることで、自信につながります。
伝えたいポイント
- 「最後までよく走ってたね」
- 「同じ動きを安定して続けてたね」
- 「ミスが少なくて助かってたよ」
派手さではなく、
“積み重ねの価値”を言語化 してあげることが大切です。
比較が必要なとき・不要なとき
保護者として、
他の子と比べてしまう瞬間は必ずあります。
大切なのは、
「何を比べるか」 です。
避けたい比較
- スピードの速さ
- ジャンプ力
- 目立つプレーの数
比較してもよい視点
- 半年前との違い
- できなかったことができるようになったか
- 疲れ方・回復の変化
比較の軸を
「他人」→「過去の自分」
に変えるだけで、子どもの表情は変わります。
「結果が出ない時期」に知っておいてほしいこと
どんな子にも、
- 伸びが止まる時期
- 結果が出ない時期
があります。
このときに保護者ができる一番大切なことは、
「焦らないこと」 です。
速筋型でも、遅筋型でも、
成長は一直線ではありません。
体が追いついていないだけの時期に、
「向いていない」という言葉を使ってしまうと、
その後の伸びを自分で止めてしまうことがあります。
速筋・遅筋の知識は「信じて待つための道具」
ここまで読んでくださった方に、
一番伝えたいことがあります。
速筋・遅筋の知識は、
- 子どもを分類するため
- 可能性を狭めるため
のものではありません。
👉 「今はこの段階なんだ」と理解して、
👉 信じて待つための道具 です。
知識があると、
- 不安が減る
- 声かけが変わる
- 比べすぎなくなる
結果として、
子どもが安心して挑戦できる環境 が生まれます。
第4章のまとめ
- トレーニング以上に、家庭の関わり方が重要
- 速筋型・遅筋型で評価ポイントは違う
- 比べるなら「他人」ではなく「過去の自分」
- 結果が出ない時期こそ、信じて待つ
- 知識は、子どもを守るために使う




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